平成28年8月28日理事会承認
重点課題1 「カリキュラム提言にむけた理論的研究 ―特別活動の未来展望―」
学習指導要領改訂などのカリキュラム策定への提言や学校を基盤としたカリキュラム開発における提案に対して理論的な基盤を提供することを目的とする。10年後、30年後、50年後の社会で求められる資質・能力を特定し、(1)社会で求められる資質・能力を特別活動が直接的に育むという側面、(2)教科等で身につけた知識・技能を特別活動の中で活用したり、理論的に学んだ道徳を特別活動の中で実践したりするという側面、(3)アクティブ・ラーニング等の学習・教育活動を可能とする望ましい集団などの基盤を特別活動が支えているという側面、という3つの側面から、カリキュラム論の中に特別活動を理論的に位置づける研究を行う。その際、欧米で提唱された資質・能力理論を日本に援用するだけでなく、日本の特別活動の実践の蓄積が、実は諸外国で注目されている資質・能力論や近年諸外国で新しくカリキュラムに組み込まれるようになった教科外活動のモデルとなり得るといった発想も大切にし、「tokkastu」を世界に向けて発信することも視野に入れたい。
重点課題2 「特別活動の意義や実態分析のための定量的研究 ―特別活動の今―」
特別活動に熱心に従事している者にとって特別活動の意義や実態は自明である。しかし表面的な学力論や派手な教育改革論に翻弄されて特別活動の価値が見失われようとしているのも事実である。そこで実証的研究を通じて特別活動の意義や実態を可視化する必要がある。とくにアンケート調査等の定量的調査研究は個人で着手するには限界があり、学会全体として組織的に取り組むのが望ましい。そこで特別活動の意義や実態を定量的実証的に研究することを重点課題のひとつとする。調査観点としては、特別活動で身につく力の可視化、アクティブ・ラーニング・教科・学力の基盤としての特別活動の意義の可視化、多様な他者と協働する力と特別活動との関係の可視化、教員養成課程で特別活動を学ぶ意義の可視化、特別活動に使われている時間の実態、教科や他領域との連携の実態、学級会活動等で取り扱う事項の実態、学級会やHRの「企画委員会」など事前事後指導の実態、学級担任がもっとも重視している学校行事、生徒総会や役員選挙等の実施実態などが例として挙げられる。
重点課題3 「特別活動の意義や実態分析のための定性的研究 ―特別活動の今―」
実践者本人または第3者による実践記録、参与観察を含む観察記録、ナラティブ分析を含む面接調査などの定性的調査を基盤として特別活動の実践の意義と実態を分析する研究である。単なる実践描写にとどまらず、描写された実践のもつ意義や課題を理論に基づき研究するといった視点を大切にしたい。また、特別活動によって個々の児童・生徒がどう成長するかについて、所属する学級集団の4月から3月にかけての変化、所属学年の学校内での位置づけ、年齢等に起因する発達段階などとの関連の中で、分析を行いたい。
一方、現場レベルで歴史的に積み重ねられてきた各地域や学校ごとに異なる独自の実践方法の差異にも着目したい。その際、たとえば、〔小学校5年の6月ごろに行う「お楽しみ会」の持ち方についての話し合い活動〕、といったように、学年、実施時期、話し合いの題材等の諸条件を揃えた上での各実践の比較分析することにより、たとえば、子どもたちのもつ多様な願いや意見をみんなが納得するような合意形成にどのようにつなげていくか、その過程で、いわゆる計画委員会、学級会ノート、板書、ハンドサイン等がどのように工夫されているか、あるいは、討論(討議)の形式や多数決の意義をどのように位置づけているかについての相違を浮き彫りにすることにより、それまで、各地域・学校では「当たりまえ」とされている実践のもつ特徴や意義について考察したい。また、これらの実践に共通する理念や視点を抽出し、理論に基づきながら各実践方法の本質を探りたい。さらに、特別活動(または特別活動的な活動)を国際的に比較することにより、日本の特別活動がもつ教育文化的特徴についても考察したい。
重点課題4 「特別活動研究史のメタ分析研究と特別活動原論 ―特別活動研究の歴史―」
これまで蓄積されてきた特別活動に関する研究を、研究対象、研究方法、基盤原理、研究成果の利用方法の志向性(政策提言、授業改善など)、時代背景、などの視点からメタ分析することにより、さまざまな時代や場面における特別活動研究の特徴と課題を考察する。また、これらを通してこれからの特別活動研究の指針を探りたい。その上で、とくに特別活動研究の初心者が必読とすべき文献や、特別活動研究の原理的基盤に通底し続けている古典的な文献、隣接学問領域における関係理論等を学会として整理することも行いたい。